2017年6月15日木曜日

人間失格を読んで。


太宰治に関しては昔からあまり良いイメージがなく、走れメロスは読んだ事があるくらいで、ずっと避けてきた。これには少々理由がある。

僕の父親はもともと作家志望で、最も傾倒していたのが太宰治だったのです、僕は父親の事を一芸術家としては大変尊敬しつつも、父親としては結構めちゃくちゃな人でしたので困惑したことが多々ありました。
それが故、父親像と太宰治はどうもダブルところもあり、太宰治を木村家の諸悪の根源だ、と小さい頃からずっと思っていました。

しかし偶然にもラジオで先日聞いてしまったものですから、気にもなり本をかって読んでみました。その主人公はそれはそれは他人とは思えないほど、父親というか自分というか、そんな気持ちで一気に読んでしまいました。

彼は最後まで人間との関わりに馴染む事が出来ず、おどけ、酒、最後はモルヒネと手を染めていわゆる廃人となって行くのです。
ああ父親は逆にこの滅びて行く様にずっと憧れていたのだろうな、と思った。

そんななんとも複雑思いがこみ上げてくる作品ではありますが、久しぶりに父親の汗の匂いを嗅いだ様な気がしました。

この作品の最後の下り、とても印象的で した。〝今は自分には、幸福も不幸もありません。ただいっさいは過ぎてゆきます〟
 そして第三者に言わせてはいるが唯一自己肯定しているあとがきの最後の下り〝わたし達の知っている葉ちゃんは、とても素直で、よく気が効いて、あれでお酒さえ飲まなければ、いいえ、飲んでも、、、神様みたいないい子でした〟

本当に涙が出ます。